TOKOTOKO'S
TEA HOUSE
利休百首
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その道に入らんと思ふ心こそ我身ながらの師匠なりけれ
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ならひつゝ見てこそ習へ習はずによしあしいふは愚かなりけり
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心ざし深き人にはいくたびもあはれみ深く奥ぞをしふる
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はぢをすて人に物とひ習ふべしこれぞ上手のもとゐなりける
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上手にはすきと器用と功積むと此の三つそろふ人ぞよく知る
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点前にはよわみを捨てゝたゞ強くされど風俗いやしきを去れ
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点前には強みばかりを思ふなよ強きは弱く軽く重かれ
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何にても道具扱ふたびごとに取る手は軽く置く手重かれ
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何にても置付けかへる手離れは恋しき人に別るゝと知れ
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点前こそ薄茶ににあれと聞くものを粗相になせし人はあやまり
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濃茶には点前を捨てゝ一筋に服の加減と息を散らすな
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濃茶には湯加減あつく服はなほ泡なきやうにかたまりもなく
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とにかくに服の加減を覚ゆるは濃茶たびたび点てゝよく知れ
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余所にては茶を汲みて後茶杓にて茶碗のふちを心して打て
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中継は胴を横手にかけて取れ茶杓は直に置くものぞかし
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棗には蓋半月に手をかけて茶杓は丸く置くとこそ知れ
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薄茶入蒔絵彫もの文字あらば順逆覚えあつかふと知れ
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肩衝は中継とまた同じこと底に指をばかけぬとぞ知れ
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文琳や茄子丸壷大海は底に指をばかけてこそ持て
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大海をあしらふ時は大指を肩にかけるぞ習ひなりける
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口広き茶入れの茶をば汲むと言ひ狭き口をばすくふとぞ言う
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筒茶碗深き底よりひき上り重ねて内へ手をやらぬもの
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乾きたる茶巾使はば湯をすこしこぼし残してあしらふぞよき
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炭置くはたとひ習ひに背くとも湯のよくたぎる炭は炭なり
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客になり炭つぐならばその度に薫物などはくべぬことなり
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炭つがば五徳はさむな十文字縁をきらすな釣合を見よ
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焚残る白炭あらば捨て置きて又余の炭を置くものぞかし
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炭置くも習ひばかりに拘はりて湯のたぎらざる炭は消え炭
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崩れたる其の白炭をとりあげて又焚きそへることはなきなり
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風炉の炭見ることはなし見ぬとても見ぬこそなほも見る心なれ
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客になり底取るならばいつにても囲炉裏の角を崩しつくすな
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客になり風炉のそのうち見る時に灰崩れなん気づかひをせよ
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墨蹟をかける時にはたくぼくを末座の方へ大方は引け
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絵の物をかける時にはたくぼくを印ある方へ引きおくもよし
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絵掛物左右むき向ふむき使ふも床の勝手にぞよる
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掛物の釘打つならば大幅より九分下げて打て釘も九分なり
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床に又和歌の類をばかけるなら外に歌書をば飾らぬと知れ
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外題あるものを余所にて見る時はまず外題をば見せて披けよ
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冬の釜囲炉裏縁より六七分高くすゑるぞ習ひなりける
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品じなの釜によりての名は多し釜の総名鑵子とぞ言ふ
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姥口は囲炉裏ぶちより六七分低くすゑるぞ習ひなりける
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置合せ心をつけて見るぞかし袋の織目たたみ目に置け
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はこびだて水指置くは横畳二つ割りにてまんなかに置け
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茶入また茶筅のかねをよくも知れ跡に残せる道具目当に
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水指に手桶出さば手は横に前の蓋とりさきに重ねよ
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余所などへ花をおくらばその花は開きすぎしはやらぬものなり
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釣瓶こそ手は竪におけ蓋取らば釜に近付方と知るべし
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小板にて濃茶を点てば茶巾をば小板のはしに置くものぞかし
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喚鐘は大と小とに中々に大と五つの数を打つなり
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茶入れより茶を掬ふには心得て初中後すくへそれが秘事なり
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湯を汲むは柄杓に心つきの輪のそこねのやうに覚悟して汲め
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柄杓にて湯を汲む時の習ひには三つの心得あるものぞかし
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湯を汲みて茶碗に入るゝその時の柄杓のねじれは臂よりぞする
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柄杓にて白湯と水とを汲む時は汲むと思はじ持つと思はじ
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茶を振るは手先をふると思ふなよ臂よりふれよそれが秘事なり
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羽箒は風炉に右羽を炉の時は左羽をば使ふとぞ知れ
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名物の茶碗出でたる茶の湯には少し心得かはるとぞ知れ
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暁は数寄屋のうちも行灯に夜会などには短檠を置け
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灯火に油をつがば多くつげ客にあかざる心得と知れ
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ともしびに陰と陽との二つあり暁陰に宵は陽なり
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古は夜会などには床のうち掛物花はなしとこそきけ
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古は名物などの香合へ直にたきもの入れぬとぞきく
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炉のうちは炭斗ふくべ柄の火箸陶器香合ねり香と知れ
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風炉の時炭斗菜籠にかね火箸ぬり香合に白檀をたけ
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蓋置に三つ足あらば一つ足まへに使ふと心得ておけ
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二畳台三畳台の水指はまず九つ目に置くが法なり
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茶巾をば長み布幅一尺に横は五寸のかね尺と知れ
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帛紗をば竪は九寸余よこ幅は八寸八分曲尺にせよ
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薄板は床かまちより十七目又は十八十九目に置け
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薄板は床の大小また花や花生によりかはるしなじな
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花入の折釘打つは地敷居より三尺三寸五分余もあり
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花入に大小あらば見合せよかねをはずして打つがかねなり
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竹釘は皮目をうへに打つぞかし皮目を下になす事もあり
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三つ釘は中の釘より両脇と二つわりなるまんなかに打て
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三幅の軸をかけるは中をかけ軸さきをかけ次に軸もと
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掛物をかけて置くには壁付を三四分すかしおくことゝきく
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花見より帰りて人に茶の湯せば花鳥の絵も花も置くまじ
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時ならず客の来らば点前をば心は草にわざを慎しめ
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釣舟はくさりの長さ床により出船入船浮舟と知れ
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壷などを床に飾らん心あらば花より上にかざりおくべし
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風炉濃茶必ず釜に水さすと一筋に思ふ人はあやまり
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右の手を扱ふ時はわが心左のかたにありと知るべし
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一点前点つるうちには善悪と有無の心わかちおも知る
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なまるとは手つゞき早く又おそく所々のそろはぬをいふ
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点前には重きを軽く軽きをば重く扱ふあぢはひを知れ
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盆石を飾りし時の掛物に山水などはさしあひと知れ
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板床に葉茶壷茶入品々を飾らで飾る法もありけり
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床の上に籠花入をおく時は薄板などはしかぬものなり
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掛物や花を拝見する時は三尺ほどは座をよけて見よ
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稽古とは一より習ひ十を知り十よりかへるもとのその一
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茶の湯をば心に染めて眼にかけず耳を潜めてきく事もなし
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茶を点てば茶筅に心よくつけて茶碗の底へつよくあたるな
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目にも見よ耳にもふれて香を嗅いで事を問ひつゝよく合点せよ
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習ひをばちりあくたぞと思へかし書物を反古腰張にせよ
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水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝柄杓と心あたらしきよし
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茶はさびて心はあつくもてなせよ道具はいつも有合にせよ
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釜一つあれば茶の湯はなるものを数の道具を持つは愚な
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数多くある道具を押しかくし無きがまねする人も愚な
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茶の湯には梅寒菊に黄葉み落ち青竹枯木あかつきの霜
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茶の湯とは只湯をわかし茶をたてゝ飲むばかりなる事と知るべし
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もとよりもなきいにしへの法なれど今ぞ極る本来の法
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規矩作法守りつくして破るとも離るゝとても本を忘るな